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スウェーデンの学生に石川県内旅行を提案しよう!~季節や状況に応じて安全・快適にその地を楽しむためには!?~

#中学校 #2年生

スウェーデンの学生に石川県内旅行を提案しよう!

中学2年生の英語教科書の1ページに記載された「修学旅行のプランを提案しよう」という単元。中学2年の1~4クラスの生徒たちは、英語の授業で、遠く離れたスウェーデンの中学生に石川県の魅力が伝わる1泊2日の旅行プランを提案しました。第一線で活躍するコラボレーターから助言を受けてつくりあげた旅程と今回のプロジェクトが、生徒たちの英語力にどのような影響を与えたのかを紹介します。

プロジェクトのはじまり

スウェーデンに 石川県の旅行プランを提案しよう

中学2年生の4クラスは英語の授業で教科書の単元「Project2 修学旅行のプランを提案しよう」(NEW CROWN English Series2)を応用し、石川県を題材にした旅行プランづくりに取り組むことになりました。 プランを提案する相手はスウェーデンのホーラベックス中学校の生徒たちです。その背景には、5年ほど前に国際交流の一環として、スウェーデンのホーラベックス中学校の校長が本学中学校を訪れたつながりがありました。スウェーデンはスウェーデン語を公用語とし、日本と同様に外国語として英語を学んでいます。2年生の英語を担当する石川教諭は、英語を母国語とする国よりも互いに英語を学んでいる国のほうが生徒たちも臆することなく接することができると考え、ホーラベックス中学校にコンタクトをとりました。

各クラスの生徒にプロジェクトの概要を伝え、5年前に交流を行った時の動画を見せると、教室には歓声があがり、生徒たちは大いに盛り上がりました。最終的なゴールを自分たちの考えた1泊2日の石川県の旅行プランをパンフレットという形にしてスウェーデンの中学生に提案することに決め、プロジェクトが始まりました。

生徒たちに渡されたプラン作成表。ここに旅行プランを記入していった

子どもたちの活動と想い

会社をつくり、地元の魅力を掘り起こす

生徒たちは、5~6名のグループで会社をつくり、社名を決めて活動開始です。メンバーを企画部、デザイン部、広報部に分けたことで、各部単位の少人数の打ち合わせが可能となり、コロナ禍でも無理なく活動を継続できました。

最初の作業は、加賀、白山、津幡、七尾、輪島のなかから自分たちの会社(グループ)がプランを立てる地域を選ぶことでした。生徒自身も旅の目的地として訪れたことがない地域も多く、まずはそこにどんな観光資源があるのかを調べることから始まりました。 地域の選択から始めた理由のひとつには「自分たちが生まれ育った地元のことをもっと知ってほしい」という石川教諭の願いもありました。その後、金沢なら寿司を勧めたいが生魚は大丈夫なのか、食事の金額はいくらまで可能なのか、温泉に入ることに抵抗はないのかなど、スウェーデンの食文化や生活習慣も調べ、試行錯誤しながらプランをつくりあげていきました。 プランが概ね完成した11月2日にはプロに旅行プランの講義を受けるプロセスに進みます。当日は東南アジア11か国でインバウンド事業を展開するデスティネーションアジアジャパンの渋谷武明さん(以下、渋谷さん)、金沢市内で古民家再生や着地型の体験を提供する株式会社こはく代表山田滋彦さん(以下、山田さん)を迎え、訪問先の選び方や移動手段も含めた日程管理を解説してもらうことになりました。渋谷さんは東京オフィスからオンラインで、山田さんは学校に足を運び、生徒たちのプランに目を通しました。

山田さんはプロジェクトについて「小学校、中学校、高校の3校でいくつかのプロジェクトにコラボレーターとして参加しています。修学旅行のプランについては、最初は総合学習ではなく英語の授業だということに驚きました。当日はこちらが思いつかないユニークなプランも多く、質問の内容からも生徒たちが真剣に考えていることがわかりました。生徒のプランをアップデートするといってもプランに正解はありません。そこで基本的になぜそういうプランをつくったかを説明できればOKだと判断しました。提案相手が同年代だからこそ、何にワクワクするのかを生徒たちは知っています。ですから彼らが修学旅行のプランを考えることはとても合理的だと思います」と言います。

課題と解決への道

実現可能なプランにアップデート

コラボレーターから直接アドバイスをもらったことで、課題も見えてきました。生徒の立てたプランは「せっかく来るのだから楽しんでほしい」との思いが強く、スケジュールが密でゆとりのないもの、移動時間に無理のあるプランもありました。また、石川県や日本の伝統工芸について予備知識のない相手にその魅力を伝えるには情報量が足りないことなど、多くの気づきがありました。なかにはテーマと実際の観光地がミスマッチだったことに気づき、やり直しに踏み切ったグループもありました。

冬休みに入るまでは、どのグループも最終の目的である「パンフレットの作成」に向けてプランを改善する姿が見られました。プロジェクトを新聞やテレビなどのメディアを通じて学外に発信したことも子どもたちの背中を後押ししました。石川教諭は「これはもう後戻りできないぞ、という気持ちになったようです」と振り返ります。

その後、3学期に社会科でも同様に北海道の修学旅行プランを立てる課題に取り組みましたが、この時の経験を生かし、非常にスムーズにプラン作成を進めることができました。

コラボレーターに自分たちの意見をぶつけ、改善点や解決策を探る

プロジェクトを通して得られた成果

思いが伝わったときの喜びを知ってもらいたい

プロジェクトも最終段階になり、いよいよパンフレットづくりへと進みます。石川教諭からは、「手にとって読んでみたいと思わせるパンフレット、自分らしいパンフレットをつくってほしい」ということが伝えられました。

パンフレットはまず個々のタブレットでプランについての資料をつくり、英語の授業の冒頭に2人1組で相手をスウエーデンの中学生に見立て、一方が自分のプランを説明、もう一方は疑問点を尋ねます。それらはすべて英語で行われました。この時間は生徒の英単語の語彙力を高めるのに非常に有効的でした。生徒は自分のプランを正確に、しかも魅力的に伝えるためにはどの英単語を使えばいいのか、一つの日本語に対して複数の英単語がある場合はどれが最適なのかを深く調べます。石川教諭は、「当初はこのプロセスは中学2年生にはちょっと難しいかなと予想していましたが杞憂に終わりました。“相手に伝えたい”という気持ちが英語の語彙力、文章の構成能力、会話力を高めていったからです。相手が日本人だとある程度知識がある前提で会話できますが、外国人の場合はそうもいきません。 そのことに気づき、どんな情報が必要かを考えて伝えている様子を見た時は感激しました」と語ります。

個々の生徒が仕上げたパンフレットは見せ方に工夫が凝らされ、視覚的にも楽しめます。 感想を書く欄には、「地元について新しい発見があった」「もっと英語で紹介できる人になりたい」「パンフレットをつくるのは大変だった」など、率直な意見がびっしりと書き込まれていました。今後はパンフレットをデータ化してホーラベックス中学校に送り、オンラインでの交流を続けていく予定です。

最後に石川教諭は「架空の人物ではなく、実在するスウエーデンの中学生に提案するということが生徒の意欲に火をつけたのだと思います。時差やスケジュール通りに進行できなかったことなど、教師として反省するところもありますし、確かに大変だと思ったこともありますが、それをはるかに上回る喜びがありました。私自身、英語が好きになったきっかけが自分の思いが相手に伝わったときの嬉しい気持ちでした。だから生徒にも英語で自分の思いを伝える喜びを知ってほしいと願っていました。今回の経験が将来どういう場面で役立つのかはまだわかりません。でも授業だから、受験があるからという理由だけで英語を勉強するのではなく、伝わるから面白いということを経験してほしかった。そういった意味では充分に手ごたえがあったと思っています」とプロジェクトを振り返りました。

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