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金沢大学附属小学校 4年2組麹のよさを広めようプロジェクト

#小学校 #4年生

麹のよさを広めようプロジェクト

コラボレーターの熱意が児童に感銘を与え、想像以上の成果をもたらたした4年2組のプロジェクト。
担任教諭が「総合学習の時間がなかったらクラスの雰囲気は違っていたかも」と語ったゴールまでの時間にはどのような物語があったのでしょうか。現実の壁に直面しつつも自主的に解決方法を模索し、コラボレーターの想いに応えたいと奮闘した児童の姿を紹介します。

HESOコミュニティモデル

プロジェクトのはじまり

コラボレーターの情熱に応えたい

麹(こうじ)は日本が誇る食文化であり、石川県にも古くから麹を用いた特産品が受け継がれています。4年2組のプロジェクトはその麹の魅力をいかに多くの人に知ってもらうかをテーマとしてスタートしました。

2組が麹をテーマとした背景にはあるストーリーがありました。当初は加賀野菜を4年生の総合学習の大きなテーマとしており、その一環で加賀野菜にたずさわっている人に話を聞こうということになり、1学期の終わりに学校に招いたのが、かぶら寿しで有名な四十萬谷本舗(金沢市)の四十万谷さんでした。四十万谷さんが都会の大手企業勤めを辞め、「地元の食文化に関わる仕事がしたい」と家業を継いだいきさつを知り、「皆さんの力を貸してもらいたい。一緒に麹を広めてほしい」という熱いメッセージが児童の心を打ち、プロジェクトのテーマは「麹のよさを広めよう」に決定したのです。

生徒たちに熱い想いを語る四十萬谷本舗(金沢市)の四十万谷さん

子どもたちの活動と想い

子どもたちの成長のプロセスをたどる

コラボレーターの熱意に応えるかたちで始まりはしたものの、麹は小学校4年生の児童にとっては未知の物体でした。加賀野菜のように現物を確認できることもなく、麹や発酵という言葉を聞くのも初めてで、児童の頭にはたくさんの「?」があふれた状態です。

そこで2学期は麹について調べることにしました。インターネットや家族への聞き取り、家族の買い物に同行して麹商品を実際に確認するなどの方法で調べ、一定の知識を得ることができました。次に知識は得たけど、実感が伴わないという問題に対して助け船となったのが、NTT西日本地域活性推進室から提供された麹漬けキットの存在でした。児童はキットを自宅に持ち帰り、それを利用した漬物を食べることで一気に麹に対する親近感が増したようです。担任の田中教諭は「コロナ禍の影響もあり学校で調理するのは難しかったのでキットの提供は本当にありがたかったです。実際に食べてみたことで子どもたちの意識が大きく変わったのを感じました」と振り返ります。

11月には多くのゲストを招いて金沢市の未来のまち創造館で麹のよさを広めるアイディアを発表。9つのグループに分かれて、「麹のオリジナルキャラクターづくり」「親子で麹料理をつくる体験会の実施」「麹をPRするチラシづくり」「クッキーやスイーツなど親しみやすい商品の開発」などのアイディアを出し、プレゼンを終えた児童は「ドキドキしたけど本番がいちばん上手くできた」「また次のレシピも考えたい」と感想を話し、見学に来ていた保護者からは「家での会話が増えた」「堂々と発表していてびっくりした」という意見もありました。四十万谷さんからは「自分たちにはない発想に驚きました。これからも一緒に麹のよさを伝えていきたい」とあたたかい言葉をいただくことができました。

課題と解決への道

一つの成功がゴールであってはならない

多くのマスコミが集まった華々しい発表会終了後、実はそこからがプロジェクトの本質に迫る活動になりました。生徒が発表したアイディアは身近なものから大掛かりなものまでさまざまでしたが、どう発展させていけばいいのかという壁にぶつかります。

身近なアイディアは実現可能だがあまり普及には結びつかない、一方大がかりなものは効果があるけど自分たちだけでは実現が難しいという現実の壁に直面し、一時はクラス全体が停滞ムードに。田中教諭は「発表会がゴールで終わることがあってはならない」と危機感を抱き、再び児童とともに四十万谷さんに抱えている課題を相談してみました。

課題の突破口となったのは、四十万谷さんの仲間でもあり、世界を舞台に活躍するマーケッターの若山さんからのアドバイスでした。それは、1学期に「麹を広めたい」と思った時の原点に戻ろうというもので、麹を広めるターゲットの設定からリスタートしました。

その結果、麹を知ってもらいたい相手を「子育て世代」に設定。子育てをしている世代ならその子どもにも広まるから最適だというところまで来ましたが、次に「では誰に?」という問題が出てきます。マーケッターの若山さんから「一番身近なのは皆さんのご家族かもしれません。まずはご家族を説得できるかどうかが一つの判断基準になるのでは?」とアドバイスがあり、週に1度以上麹を使った料理が食卓に並べばそれで説得できたことになるという判断基準を設けて次の段階へと進みます。

プロジェクトを通して得られた成果

教育では外せない部分を学ぶことができた

母親への説得をそれぞれの家庭で実施した結果、アンケートでは週に1度以上麹を使った料理が出てきた家庭は少数にとどまりました。児童たちはこの結果を残念な気持ちで四十万谷さんに報告したところ、帰ってきたのは「こういう結果にこそ価値がある。実際に麹を使う人の生の声であり、我々が解決すべき課題が見えたことが素晴らしい」という思いがけない答えでした。その声に勇気づけられて児童の活動は続きます。

麹料理をつくってもらえなかった理由を探ることから再び活動は始まります。聞き取りを行った結果、

・麹の使い方がよくわからない
・価格が高いので特別な日にだけ使う
・どこで買えばいいのかわからない

という意見が出てきました。
そこであきらめることなく、使い方がわからないという意見に対して簡単なレシピを考案して提案したり、スーパーの中でどこにどんな商品と一緒に売られているかを調べたりと、終盤になっても児童の探究心への熱量が落ちることはありませんでした。この時期を田中教諭は「次に四十万谷さんが来るまでにこれを伝えようという小さな目標を積み重ねていった結果だと思います」と語ります。

3学期も終わりに近づくころ、児童から「四十万谷さん感謝の気持ちを伝えたい」という声があり、最後に四十万谷さんを招いて予定外の発表会が行われることに。田中教諭も心の中ではそういう機会を願っていましたがあえて言い出すことはせず「このままじゃ終われないよね?」と問いかけるにとどめていましたが、期待どおり児童からの意見に後押しされ再度四十万谷さんに来校を依頼しました。
そのころには、11月の発表会前より児童たちの手際も驚くほどよくなり準備は数日で完了。発表後に四十万谷さんから「皆さんがしてきたことは、私達やプロのマーケッターが日々悩みながら取り組んでいることと遜色ないレベルです。」との感想が述べられました。発表会終了後には興奮冷めやらぬ児童から「これからも麹を広めていく」「麹が好きになった」などの声を聞くことができました。

田中教諭はプロジェクトをこう振り返ります。「ご家庭の協力ももちろんですが、なにより地元が誇る麹や発酵の魅力を知ってもらいたいという四十万谷さんの熱意があってこその体験でした。1年間、じっくりと外部の方とのつながりを得て活動したことで、“結果を出すことだけが成功ではない、苦労したことのなかにこそ宝物がある”という教育では外してはならない部分を学ぶことができたと思っています。子どもたちも1学期には想像できなかったほど成長しました。大変ではありますが、やりがいもあるし何より楽しかった。児童にとっても私にもっても学ぶことが多い経験でした」。

レシピ考案のために児童が家庭でつくったクッキー
感謝の気持ちを伝えたいと開催された2回目のプレゼン。初回よりさらに堂々と発表する姿が見られました

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