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HESOの声(箔座株式会社 篇)

昨年度、金大附属小学校4年生が取り組んでいる「金沢の誇り 金箔魅力発信プロジェクト」コラボレーターの箔座株式会社(以下、箔座)。プロジェクトの参画にとどまらず、箔座の高岡美奈代表取締役社長はじめ、同社の社員たちは「Project HESO」セミナーに多く参加をしています。本学附属学校研究推進部会コラボレーション推進室室長・福田晃が、箔座の高岡社長、四十万谷昌代さん、高見百香さんに話を訊きました。

箔座株式会社:高岡美奈代表取締役社長、四十万谷昌代さん、高見百香さん

本学附属学校研究推進部会コラボレーション推進室室長:福田晃

左から、本学附属学校研究推進部会コラボレーション推進室室長・福田晃、箔座株式会社四十万谷昌代さん、高岡美奈代表取締役社長、高見百香さん

福田:

今年度、金大附属小学校4年生が総合学習で取り組んでいる「金沢の誇り 金箔魅力発信プロジェクト」に、箔座さんはコラボレーターとして参画してくださっています。高岡社長は以前から、「Project HESO」の理念に共感していただいていたそうですね。 

高岡:

きっかけは「Project HESO」について書かれた日経新聞の記事(2022年10月)をたまたま目にしたことでした。私自身、以前から教育について思うところがあり、「Project HESO」が掲げる、学校と地域社会が協働で新たな価値を創造するという理念、活動に共感したんです。記事の中には「協力企業を発掘中」とありましたし、ぜひ参画させていただきたい、と。

箔座株式会社の高岡美奈代表取締役社長

福田:

コラボレーターとして参画してくださっているだけでなく、高岡社長をはじめ、社員の皆さんは「Project HESO」セミナーにも積極的にご参加くださっていますよね。

高岡:

最初に参加したのは、広島県教育委員会教育長の平川理恵さんの講演会(2022年11月)でした。「Project HESO」にコラボレーターとして参画するにあたり、どういうことができるのかヒントになることや、自分たちが仕事をする上でも共通することがあるんだろうなと思い、広報の四十万谷と参加しました。福田さんの「Project HESO」への思いも、平川さんのお話も興味深かった。これはきっと社員にとっても、仕事をする上でも役立つような気づきがあるはず、と。プロジェクトの参画だけではなく、社員のみんなにもセミナーに参加して欲しいと思い、声を掛け始めました。

福田:

そのあたりは、ぜひお聞きしたかったところです。私自身、学校の中だけではなく、外に出ることで、異文化からの学びはとても多いと感じています。逆に、企業の方にとって、教育というのは一見、直接関係がないように感じます。それでも、セミナーに参加してくださっているのはどうしてですか。

高岡:

「Project HESO」セミナーに行くと、やはり教育関係者の方が多いので、最初、私たちって場違いかなと感じていたんです。でも、教育と、私たちの企業活動は、信頼関係の築き方や一緒にプロジェクトを進めるときのプロセスなど、人と人が関わる以上、共通点は必ずあるだろうと予感はありました。実際にセミナーに参加してみて、まさに、そういったキーワードがたくさん出てきました。一緒に行った四十万谷は「仕事としても行きたいし、仕事と関係なくまた行きたい」と言っていた。これは、私が感じることとまた違う気づきが社員にもあるはずだ、と思いましたね。

四十万谷:

私は広報なので、比較的、外部の方と話す機会は多いんです。ただ、会社や商品について話すことはあっても、どうしても意識や視点が内向きになりがちだと感じていました。「Project HESO」セミナーに参加するたびに感じるのは、子どもたちだけではなく、大人こそ、学び続けなければならないな、と。会社で、仕事のスキルを上げることももちろん大切ですが、外の世界でいろいろな人に会うことで新たな気づきがあり、そこで生まれたものから社会に向かっていく力をつける――それができる世界だなと感じました。

広報課の四十万谷昌代さん

高岡:

自分が受けてきた教育を振り返ると、言われたことを、決められた枠の中からはみ出さないように、気にしながらやってきた感覚がある。そういう教育を受けた私たちや少し下の世代が、会社で働いている。少なからず、仕事に影響しているのを感じています。でも今さら、教育を受け直すわけにはいかない。けれども、少なくとも、今、教育がどう変わるべきか、どう変わろうとしているのか、私も含めて知る必要があると思いました。その中で、自分たちが今後どうあるべきかについても気づきがあるだろうし、それを社内でも広げていきたいと思ったんです。


企業と教育現場は共通点が多い

福田:

企業の立場から、今の学校教育に関心を持ってくださっている方のそうした声はとても貴重だと感じます。「Project HESO」セミナーには、高見さんも何度か参加してくださっていますよね。

高見:

初めて参加したのは(2023年)8月の「3つの視点から探究観をアップデートする」がテーマのセミナーでした。そのときは「Project HESO」がどんなものかよくわかっていないまま参加させていただきました。学校教育についての話でしたが、私は自分の職場と照らし合わせて聞いていたんです。学校やクラスの運営は、組織運営と同じだなと感じましたし、クラスをどうしていくか、という話は、自分の部署のみんなとどう関わっていくか、という視点で聞いていました。参加者には教育現場の方が多いですが、毎回、セミナーの内容は企業にも通じると感じています。例えば、クラスの中で何かやるときに、率先してやる子とそうでない子がいる。構造上、職場も同じことがいえます。じゃあ、消極的な人たちに興味を持ってもらうにはどうしたらいいかとか、主体的に楽しくやってもらうにはどうしたらいいかと考えていくことも一緒だなと。

商品管理部の高見百香さん

高岡:

企業と教育現場は、びっくりするくらい共通することがありますよね。

福田:

セミナーに参加してくださった方から「新しい視点を知れた」などの声は届きますが、組織論の視点からの感想は新鮮です。私は教員時代、まんがで知る教師の学びシリーズでお馴染みの前田康裕先生から、ビジネス書をたくさん読むように言われました。ビジネスは学級経営と同じだから、と。それが逆の視点でも同じことが言えるのだとわかりました。


高岡:

今、「Project HESO」セミナーで登壇する講師の方は、学校と企業の共通点を引き出してくれるような視点を持った方が呼ばれているのかなと思います。私たちは、子どもたちのプロジェクトにも、「Project HESO」セミナーにも関わっているので、全部が繋がるんです。毎回、新しい気づきがありますし、研修のように社内でも広げていきたいですね。

福田晃(本学附属学校研究推進部会コラボレーション推進室室長)

セミナー後、社内でシェア会を開催

福田:

話を聞いて嬉しい驚きだったのですが、「Project HESO」セミナーに参加された後に、学んだことのシェア会を社内で開催されたそうですね。

高岡:

マネジメントを通して人を育む」がテーマのピョートル・グジバチ氏のセミナーの後、高見が「シェア会をやりたい」と企画書を持って来てくれたんです。その場で「いいね、やろう!」と。会社から言われてやるのではなく、自ら「シェア会をしたい」と思ってくれて、すぐ行動に移してくれたことがシンプルに嬉しかったです。

高見:

移動の車の中での雑談で「シェア会をやりたいね」という話は出ていたんです。とはいえ、現実化させるにはどうしたらいいのかなと。そこをすかさず、四十万谷課長から「企画書を書いて、一緒に持って行こう」と。その言葉に後押しされて「やります!」と。夕方に話して、その日のうちに社長室に持って行きました。普段の業務では社長に接する機会が少なくて、そうやって社長に提案してもいいんだ、と。私、企画書を初めて書きました(笑)。

四十万谷:

私の部署は社長との距離が比較的近いんです。高岡は、話しかけにくいタイプでは決してないですが、高見は(社長に直接)提案していいとは思わなかった、と言っていましたね。「何言ってるの、大丈夫だよ!」と。禁止されていると思っているわけではないとしても、押せるスイッチがあることがそれまで認識されていなかった。私もハッとしました。今回は、良い前例ができたかなと。

福田:

素晴らしい取り組みですね。実際のシェア会ではどのような話が出たんですか? 

高岡:

セミナーに参加したみんながそれぞれどう感じたか、職場でどう活かせそうか、といったことですね。「心理的安全性」というキーワードは何度も出ました。今回のシェア会には8人の社員が参加しました。セミナーに参加しなかった社員も1人参加してくれましたが、みんなの話を聞いて興味を持ったと話していました。


高見:

私は、そのセミナーも職場に照らし合わせて聞いていましたが、社員によっては、家庭に照らし合わせ、親という立場で聞いていたりする。それぞれ、印象に残ったことや気づきをシェアすることで、価値観などその人自身のことを知れるという感覚がありました。いろんな見方があるんだな、と思いましたし、普段、業務の連絡事項だけのやりとりになってしまいがちなのが、社員どうしの距離が近くなる感覚もありました。

四十万谷:

シェア会では、セミナーの内容にとどまらず、自分の普段の業務にも照らし合わせて、自分の考えを話す社員もいました。通常の業務の中ではなかなか聞けない話も聞くことができました。社内でも距離が近づいた気はします。

高岡:

当社は社員90人くらいの会社ですが、部署ごとのセクショナリズムはどうしてもあります。それをどう取っ払うか。お互いの価値観や、共感したり信頼できる部分を、業務ではない場面で感じられることは大きい。高見からも話が出ていましたが、この人はこう感じたんだ、と、人の価値観に触れることで、今度仕事でこういう相談ができるかもしれない、と。社員どうしの信頼感や結束にもつながるのではないかなと感じています。

福田:

シェア会がさらに素晴らしい効果を生み出しているんですね。

「Project HESO」から繋がる縁

福田:

コラボレーターとしてだけではなく、「Project HESO」セミナーに参加する中で、気づきがたくさんあったとおっしゃってくださいました。例えば、セミナーの参加者どうしのコミュニティに帰属することでほかに得られたものや、何か良かったことはありますか。

高岡:

例えば、ピョートルさんの回をご縁に知り合った方もいますし、ものすごく、世界が広がりました。こんな風に人の縁ってつながっていくんだな、と実感しています。もちろん今までも、仕事を通して多くの出会いはありましたが、仕事では出会うことがなかったかもしれない分野の方たちと、面白いように繋がっていく。この年齢、社長という立場だからこその繋がりも、もちろんありますが、「Project HESO」でまた新たなご縁があるかもしれない。期待感もとてもあります。


四十万谷:

まず福田さんがすごく動かれていらっしゃるじゃないですか。福田さんが、いろいろな人を繋げて、パスをまわしてくれるようなイメージがありますね。

福田:

繋げよう、という意識はあまりなくて、この人とこの人が繋がったら面白そう、と思っているだけです(笑)。

高岡:

私たちは金箔を扱っている会社ですから、やはり金箔を軸に繋がっていく。私たちには、大好きな金箔を残していくため、金箔の可能性を追求する使命があるわけですが、金箔の魅力、可能性に関して、さまざまな分野の方がいろいろな形で協力してくださる。そういう意味でも、仕事への新しい気づきがどれだけあったか……。今後、金箔を残していくためには、今までと同じ価値観だけではダメ。そこは教育とも共通しているかもしれません。次の代に、金箔をきちんと残していくためには、いろいろな意見を聞きながら考えていかないといけないなと。そういう意味でも、大きな縁をいただいています。

福田:

なるほど、今までの価値観からアップデートが必要という視点でも、教育と企業には共通する部分がありますね。

高岡:

高見は、これが広がれば会社が変わると言っていましたね。詳しくはまた聞きたい(笑)。

高見:

会社はどんどん良い方に変わると思います。

予測不能な事態に問われる対応力

福田:

プロジェクトのコラボレーターとして子どもたちと関わる中での気づきなどはいかがでしょうか。

高岡:

プロジェクトを通して、子どもたちに何でもやってあげたくなってしまう。でも、子どもたちから自発的に、自然発生的に出たことを大切にしますよね。こちらができることを何でもやればいい、というわけではないのは難しさもありました。

四十万谷:

生の授業ですし、子どもたちが相手なので、予測不能なところがありますよね。仕事では当然、変更が入りながらも、まず計画があります。ある意味、予測不能な中で進めていくことに慣れていないんです。

高岡:

対応力が問われているように感じます。例えば、会社の管理職ミーティングでは、きっちり計画を立てて、余地がない計画になりがちです。私たちが受けてきた教育の影響が反映されているようにも感じる部分。計画を立てるのにも時間がかかる。もちろん計画を立てるのはすごく大事なことです。でも、その計画と同じようにはまずならないわけです。

福田:

教育現場でもまったく同じことが言えますね。

高岡:

元旦に起きた能登半島地震でも感じましたが、いつ何が起きるかわからない。予測できないことが起きたときに、どう対応できるか。その力をつけないといけない。手法に凝り固まってしまうと、何かが起きたときに対応できない。これは、これまでの教育に影響があるんじゃないかなと強く感じます。

私は、父から会社を継いだとき、何か手法を教わったことはないんです。父の金箔への愛情を見て、金箔を次の世代に残していこうと思った。時代は変化していくので、どうやっていくかは、バトンを受け取った者が、考えていくしかない。

あらためてになりますが、こうして「Project HESO」に関わる中で得られた多くの気づき、ご縁が今後に繋がる力になると感じています。

福田:

まさにいろいろなことに通じるお話です。これからも宜しくお願いします。今日はありがとうございました。

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