2組の子どもたちは、尾張町商店街に息づく「まちの想い」をたしかめるところから学びを始めました。歴史あるこの商店街を歩き、出会った人たちに耳を傾けるなかで、子どもたちはある共通の願いに気づきます。それは、「尾張町が、これからも長く、にぎわい続けるまちであってほしい」という思いでした。
そうした声をもとに、6年2組は自分たちのビジョンとして「長い歴史がこれからも続いていく尾張町商店街に!!」を掲げました。このまちの過去と現在をつなぎ、未来へとつなげていくために、今の自分たちにできることは何か――。子どもたちは、その問いに真正面から向き合い続けました。
授業では、尾張町商店街の魅力を“掛け算”してアイデアを生み出すワークにも挑戦。たとえば、「老舗×体験」「歴史×写真」「お店×ベンチ」といったかたちで、尾張町にある資源や特徴を組み合わせて、新たな価値を生み出す方法を探りました。
そこから出てきたアイデアは多岐にわたります。
- 外で食べる仕掛けをつくる
- 商店街の中にベンチを設置し、立ち寄りやすくする
- SNSやホームページで尾張町の情報を発信する
- 老舗交流館などを活用し、商店街のお店とコラボした体験イベントを開く
- 共通のれんを設置して、まちに統一感を出す
- お店ごとに個性あるのれんをつくり、楽しみながら歩けるまちにする
- 映えるフォトスポットを設置する
これらの案を整理し、子どもたちは代表者によるプレゼンテーションを行いました。相手は、尾張町商店街のキーパーソンである村松さん。緊張しながらも、一人ひとりが想いをこめて伝える姿に、プレゼンを受けた大人たちも大きくうなずいていました。

そのなかで特に注目されたのが、「のれん」のアイデアでした。「まちの風景を彩るのれんを共通でつくることで、歩いていて楽しくなる」「それぞれのお店に個性あるのれんをかければ、まち歩きに新たな発見が生まれる」――そんな2組の提案が採用され、のれんづくりが始動することに。

子どもたちは各自がアイデアを練り、それぞれののれん案を制作。完成した作品は、村松さんの手元に届けられ、今後の活用が見込まれています。商店街の未来に、子どもたちの提案が実際に生きていくことになるのです。
この取り組みの裏には、子どもたちの試行錯誤と地道な努力がありました。なかなかアイデアがまとまらなかった時期もありましたし、クラスで意見がぶつかることもありました。それでも、「尾張町をよりよくしたい」という思いだけは決して揺らぐことはありませんでした。
壁にぶつかっては立ち止まり、また前に進む――そんな経験を重ねながら、子どもたちは主体的に課題を捉え、解決に向けて歩み続けてきました。
まちを見つめ、人とつながり、未来に向けて自分たちの役割を考える――そんな深い学びが、確かに2組の子どもたちの心に刻まれたように思います。
きっとこの経験は、彼らの人生のなかで何度も思い出されることでしょう。まちの一員として何ができるかを考えたこの1年は、これからの社会を生きていくうえでの、かけがえのない土台になったに違いありません。